センター試験長文問題全訳


2008年センター試験第7問

 「授業中にはたいてい、答えようとはしない。先生に叱られたくはないもの。」12歳のアガトは言う。教室では評価されることの恐れがすぐに第二の性格となってしまうのである。生徒たちはその恐れを運命として受け入れる。正式なカリキュラムでは、生徒たちが成功しようという意志や適性、才能を発達させることが問題となっている。しかし、生徒たちの自信に関しては、一言も触れられていない。
 問題なのは、生徒たちの誤りを強調しすぎて、教師が生徒の優れた点を評価しそこなっていることである。その結果、生徒たちは判らないまま教室から出る恐れがあっても、発言するより黙ってしまうことを選ぶことになる。評価されることへの恐れから、注意力の一部は停止してしまい、それは生徒の務めが実現するのを妨げるのである。
 教師から「君の宿題はダメだ」と言われると、生徒は「自分は決して成功しないんだ」と思ってしまう。さらに悪いことに、出来の悪い生徒はもはや勉強する意欲がなくなってしまい、「どうせそんなことは自分には関係ない」という態度を取ってしまうのである。フランスでは、点数が知性や才能、つまりは最終的に与えられたとみなされる特質を表しているという考えから、あらゆる不都合が生じているのである。このよく知られた考えを受け入れ、そうした特質を発展させるには勉強することだと、生徒に思い起こさせなければならないのだろうか。だが失敗は学習の一段階に過ぎないのである。
 ルーアンで何人かの教師が、生徒に良い点を取らせて、評価されることで生じる不安をやわらげようとするささやかな変革を始めた。試験の何日か前に、授業中にすでにやったことがあり、本番の試験で問われる可能性のある練習問題を与えたのである。「生徒たちはそれまで以上に授業や練習問題に注意深く取り組んだ。彼らがこんなにも授業内容をよく理解したことはなかった。」と教師は喜んでいる。
 他の実例として、パリの中学校で生徒に自信を取り戻させる様々な活動を提供しているところがある。CDを作らせたり、ビデオで映画を撮らせたりしているのだ。テストの点もあがったし、雰囲気も良くなっている。生徒たちは学校がまた好きになっているのである。


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