この30年間で「カワイイ」という言葉は日本語の会話で最もよく使われる言葉のひとつになった。もともとは恥じらいを表す表情を指す言葉だった。次に憐れみの感情を表すようになり、その後「かわいらしい」という意味を持つようになった。「かわいらしい」という意味は、今でも例えば子供や小さな動物を表すのに使われている。しかし今日では、もはやか弱く魅力的な存在に限らず、電話、車、建物、あらゆるものが「カワイイ」と表現されるのである!
こうした傾向は、まず何よりも社会的行動の変化の結果である。たとえば若い女性が上司のネクタイを見て「カワイイ!」と叫ぶのを耳にすることは珍しくない。以前の世代では、男性を褒めるときにこの言葉を使うことは難しかっただろう。
このようにカワイイものを好む風潮は、日本企業にとって新たな市場を開拓した。日本企業はこの風潮を利用して、ティーンエイジャーやヤングアダルト向けの人形や玩具など、これまで以上にカワイイものを提供している。こうした新商品の成功は、まさに「カワイイ現象」に拍車をかけ、その波は国境を越えてヨーロッパにまで広がっている。この言葉は、日本文化のこうした一面を高く評価するフランスの若者たちの口からも聞かれるようになった。
この振る舞いは、真面目さや成熟を拒絶していることの表れではないかと危惧する人もいる。カワイイとは、子供時代に戻りたいという願望や、歳をとることを受け入れることの難しさを反映していると考えるのだ。いずれにせよ「カワイイ」は今や海外における日本のイメージの重要な一部であり、日本の経済的・文化的影響力の一部でもある。