2003年センター試験第7問
誰もが人生において少なくとも一度はこの奇妙な現象を経験している。それはある言葉が口先まで出かかっているのに、思い出せないという現象である。思い出そうとすればするほど、思い出せなくなってしまうのである。
こうした記憶の裂け目を説明する心理的なメカニズムは判っていないが、人がその裂け目から脱しようとするために何をするかは判っている。そのような場合に大部分の人々が取る態度は、集中することである。だが何に集中するというのか?思い出そうとしている言葉についてなのか?でもそれは不可能である。なぜならその言葉を見つけられていないのだから。それでは他の何について集中するのか?何についても集中できないのではないか!
実際には、知的な緊張を高めたり、反対にくつろいだりしても無駄なのである。思い出そうとするためには、一度か二度深呼吸をするか、あるいは心の中で何も考えずに5つまで数えてみるのである。それから同じ分野に属する言葉を探してみることである。
試験の時などには、いくつもの答えが思い浮かぶことがある。そうした場合、重要なのは最適なものを見つけることである。そんな時、記憶の裂け目に入ってしまったら、一番いいのは自発的に解答を導き出すことである。こうしたやり方は往々にして良い結果をもたらすものだ。その理由は単純である。ある日、読書をしている時、あるいは授業を受けている時、憶えたことが記憶から欠落してしまうことがある。しかし記憶はそれを記録しているのである。従って答えは判っているはずなのだ。ただそれを見つけられないだけなのである。自発的に解答することで、直感を信頼するのである。そうすればとても効果的であることが多い。これほど重要な能力を決して疎かにしてはならない。
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