25  (8月21日)
   私は考えられ得る限りおよそ文学というものから遠く隔たった環境の中に生まれた。私の育った家には本が一冊もなく、わずかに新聞が時々あるだけだった。父親は話すのは好きだったが読むことは好まなかった。様々な知らせは仲間の口から聞いていた。母親はいつもミシンをかけていたり、料理をしていたりで、暇な時間などなかった。私達のまわり、両親や隣人たちのまわりの誰一人として、本というものがどういうものなのか理解することさえできなかっただろう。私は、14歳になるまで、公教要理や学校の勉強を学ぶためにしか本を読んだことがなかった。
  1. à peine:肯定的に「かろうじて、やっと」。否定的なら「ほとんど~ない」
  2. se faisait dire:se faire+inf.不定詞が他動詞で se がその間接目的語の場合「自分(のため)に~させる、~してもらう、~される」
  3. temps à perdre:à+inf.は必要・目的を表し「~すべき、~するはずの」
  4. n'eût pu:接続法大過去。条件法過去第2形(条件法過去の代わり)としての用法。過去の事実に反することを表す。「たとえ書物に類するものが身近にあったとしても」というような文が省略されていると考える。なお、n'eût puは文章語で neだけで否定を表している。
  5. ce que pouvait être un livre:関係代名詞 queは属詞としての用法。 Il n'est plus l'homme qu'il était.(彼は昔の彼ではない)なお、pouvait être un livreは主語が名詞のために倒置している。(関係詞節中、主語が名詞で、かつ動詞で文が終わるような場合は倒置されることが多い)
  6. Je n'ai:後続の queと ne~queの構文をなしている。

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