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シューベルトの音楽の長さには退屈して眠くなりませんか、とストラヴィンスキーは尋ねられた。 「目が覚めた時に天国にいるような気分ならば、かまわない」と彼は答えた。 シューベルトの音楽は天国を思い起こさせる。 より正確に言えば、 それは天国への郷愁を表している。 しかし、 それはどのような天国に対するものなのか。 もちろん、 神学者の天国ではないし、 ダンテの天国でもない。 そうではなくて、 無垢な場所、 無邪気で優しい場所と考えられている天国のことであり、 それは地上でこの上なく愛し合っていた人々が再会する場所である。 シューベルトの音楽は、この失われた楽園への憧れにほかならない。 だからこそ、彼の音楽は私達を感動させ、 その魅力に惹きつけるのであり、また彼の音楽が他のいかなる音楽にも似ておらず、 私達に類い稀な言葉を語りかけるのも、 同じ理由からなのである。 |
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