44  (9月27日)
   機械が人間をだめにすると思うのは、我々が受けた変化と同じくらい急速な変化の結果を判断するのに必要な距離が、おそらく少し足りないからである。20万年におよぶ人間の歴史に較べたら機械の数百年の歴史など何になるだろう。我々はこの炭鉱や発電所の景色の中に身を置いたばかりなのだ。また、やっとのことでこの新しい家に住み始めたところであって、その家は建て終えてさえもいないのである。すべてが我々の周りで急激に変化した。我々の心理状態そのものも、その最も内面的な根底のところで掻き乱されてしまったのである。今日の世界を把握するために、我々は昨日の世界のために作られた言葉を使っている。だから過去の生活の方が我々の性質によりよく応えるように思えるのである。それというのも理由はただ一つ、過去の生活の方が我々の言葉によりよく応えるからである。
  1. Si:事実の提示。si ~, c'est…「~なのは…だからだ」
  2. recul:「後退、退却」だが「 (判断などに必要な)距離、時間のへだたり」という意味にもなる。
  3. Que:この疑問文は修辞疑問。
  4. en regard de:~に較べれば
  5. C'est à peine si+直説法:ほとんど~ない、かろうじて~する、~しないも同然である
  6. mine:「顔色」「鉱山」「地雷」いずれも女性名詞。
  7. Et:ここでは「結果」を表す。etは文脈に応じて順接や対立など様々な意味になる。

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