37  (9月2日)
   大多数のフランス人にとって、料理というものはひとつの洗練された形式である。料理は規律であると同時に方法でもあり、それ自体の原則と掟を持ち、それらは格言の形でよく表現されるのである。
   従って食事は儀式を挙行することであると同時に、あるリズムや規律によって秩序立てられた芸術作品でもあるのだ。それはちょうど交響曲や古典劇と同じである。
   一般的に言って、料理は主婦にとって大変重要な関心事のひとつであるし、フランス人にとっての主要な喜びの一つである。アルパゴンが「食べるために生きてはならない」と言い張っても無駄なのである。フランス人はよく食べないことは生きることではないと考えているからである。
  1. à la fois:「同時に、一度に」訳例では2箇所とも「同時に」を含めたが、たとえば、Il est à la fois intelligent et travailleur.(彼は頭もよいが勤勉でもある)のように、必ずしも「同時に」と訳出しなくてもよい。
  2. ordre:大別して(1)順序、(2)種類、(3)命令、と3つの意味がある。ここでは(1)に属する「秩序、規律」(これを4つめに大別してもよいが)
  3. D'une façon générale:de [d'une] facon+形容詞「~な仕方で、~な風に」
  4. table:もちろん原義は「食卓」であるが、転じて「料理、食事」の意味も持つ。
  5. Harpagon:17世紀古典喜劇を確立させた Molière(1622~1673)の L'Avare(『守銭奴』)の主人公。貪欲な老商人で「非常にけちな人、吝嗇家」の代名詞として仏和辞典にも載っている。
  6. a beau affirmer:avoir beau+不定詞「いくら~しても無駄である」。通常理由を示す文が後に続く。ここではle Français considère~がそれにあたる。
  7. il ne faut pas vivre pour manger:Il fautの否定形は「~すべきではない、してはならない」という禁止の意味になるので、それに従って訳出。ただし、この部分はモリエールのテクストとは異なっており、実際は「Il faut manger pour vivre, et non pas vivre pour manger(人は生きるために食べるのであって、食べるために生きるのではない)」であり、しかもこの台詞(諺を引用したものだが)を言うのは、アルパゴンの娘の恋人であるValèreである。(アルパゴンはヴァレールの言葉を繰り返そうとして、Il faut vivre pour manger, et non pas manger pour vi...と間違って言いかけるが)
  8. ce n'est pas vivre que:c'est~queの強調構文の否定形。
モリエールについてもっと知りたいなら、
→ 日本語版 Wikipedia
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またモリエールのL'Avareはフランス語版 Wikisourceで読むことができる。
→ Wikisource L'Avare (Molière)

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