ピエールは夏でも冬でも半ズボンしか穿いたことがなかった。木登りしたり、釣りに行ったり、おじいちゃんの馬に乗ったりするのには、半ズボンはとても便利だったのだ。
しかしある日のこと、母親は息子も長ズボンを穿く年齢だろうと考え、ピエールを無理やり店に連れて行き、長ズボンを一着選ばせたのである。母親は汚れないように濃い色で、また破れないように厚い生地のズボンを選ぶように、息子に強い調子で言った。最初のズボンを試着したピエールは、脚が自由に動かないと思った。店員は具合はどうかと訊いたが、ピエールはそのような服を以前に身につけたことがなかったので、答えることが出来なかった。彼はひどく窮屈に感じて、どうしてこんな苦しみを我慢しなければいけないのかと思った。母親はそのズボンがとてもよく息子に似合っていると店員に言った。ピエールはそのズボンに慣れるように、穿いて家に戻った。
通りを歩きながらも彼は不自然な様子で、みんなが彼のことを見ているような気がした。
数日後、ズボンは柔らかくなった。ピエールの身体の動きになじんで、もはや彼が動くのを邪魔するようなことはなくなった。ズボンを買ったことは彼にとって、幼年時代を脱したことを意味したのだ。
|