彼女はヨット乗りのような服を着て勝ち誇ったように通りを歩いていった。まるで若々しい白い帆船のように、彼女は大股で歩いていくと微笑み、薄い布地の下にある自分の肉体、そよ風がさわやかに撫でていく自分の身体を感じた。私は美しいのよ、あなた達みんな、判って、私とは関わりないけど。判って、そしてこの幸せな女を見て。背の高い彼女は華々しく時刻表を手に持って歩いていった。時に立ち止まりながら、彼女は彼を自分のもとへと連れてくる列車の進行を辿った。ああ、愛することの不思議、生きることの驚き。
彼女は、車道を横切る猫に腹を立てて立ち止まった。猫は車のすぐ近くを通っていて、あれじゃ近いうちに轢かれてしまう。まったくおバカさんなんだから。彼女は自分も車に気をつけた。今日は死ねないし、怪我するわけにもいかない。今日の彼女はいわば貴重品なのだ。ああ、今晩だわ。彼女は再び舗道を急ぎ足に歩き始めた。二人の男が彼女とぶつかって振り返った。良い女だなと思ったのも束の間、彼女は既にもう遠くを歩いていた。また男にぶつかったが、今度は彼女に微笑みかけてくれたので、彼女は自分が幸せで、かけがえのない恋人に逢いに行くのだということを悟ったのである。
空に雲がかかっていた。もし今晩雨が降ったら、二人は手に手を取って公園を散歩できないだろう。主よ、私はあなたを愛しています。だからどうか今晩は良い天気にして下さい。私には星にあふれた空が必要なのです。今夜彼にお茶をあげよう。お酒なんかじゃなくて、旅から戻ってきたお兄さんにあげるようなお茶。白砂の美しい岬のあるセイロン島のとても美味しいお茶を。いいえ、あの雲、白やピンクの赤ん坊の雲は大丈夫なはず。小さな雲さん、おとなしくしてね、大きくならないでね、お願いよ。
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