2-50 (2月29日) |
雨はやんでいた。寝静まった邸宅の上には、星のきらめく無限の空が広がっていた。おそらく時間はとても遅いのだろう。一軒のカフェだけ灯りがついていた。アントワーヌはカフェとは反対の、海の方へ歩いていった。海は満ち潮で波がゆっくりと穏やかな音をたてていた。浜辺には誰もいなかった。アントワーヌは砂の上に横になった。遠く、ル・アーヴルの方で、灯台が光を放っていた。彼はその光の間隔を計った。「1、2、3、4、5、光、1、2、3、4、5、光」そのリズムは彼の気持ちを少しばかり落ち着かせた。そして彼は砂の上で仰向けになった。星々のただ中に埋もれるような気がした。彼は星の名前を挙げた。「こぐま座に北極星。あの椅子の形は、名前を忘れてしまった。昴がまたたいている。なんて美しいんだ!」静けさが心地よかった。無限の空や海、それらの無関心さも彼には心地よかった。まるで大きくて優しく、無言の仲間の前にいるようだった。 |
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