J'aime mieux, murmura-t-elle, être malheureuse avec toi qu'heureuse avec lui. (Raymond Radiguet, Le Diable au corps)
「わたし、あの人と幸福でいるより、あなたと不幸でいる方がいい」と彼女は囁いた。 |
15歳で詩作を始め、17歳で小説を書き、20歳で亡くなったレイモン・ラディゲ(Raymond Radiguet 1903年~1923年)は、まさに夭逝の天才であった。 亡くなる数ヶ月前に刊行された『肉体の悪魔』(Le Diable au corps)は、第一次世界大戦の最中という時代背景に、少年と年上の人妻マルトとの恋愛を冷徹な心理分析で描いた作品である。引用した一文は、行くあてのない二人が夜のパリをバスティーユ駅からリヨン駅へと彷徨う場面で、マルトの呟く台詞である。「あの人」とは出征中の夫のことである。 レイモン・ラディゲについてもっと知りたいなら、 → 日本語版 Wikipedia → フランス語版 Wikipédia |